アトピー性皮膚炎の個々の要因 → HOME  

一般的原因論 私独自の原因論
IgE による I 型アレルギー(食物、ダニ) 食物による中毒
乾燥肌 水道水中の塩素
  外からの刺激
  乳幼児のかぶれ(紙おむつによるかぶれ)

原因除去による非ステロイド治療

 現在の一般的なアトピーの原因論は乾燥肌とダニや卵白、牛乳などによるアレルギー説が主体で、20年来変化はありません。ゆえに治療もステロイド外用剤主流の対症療法(その場の痒み、発疹を表面的に抑える治療で、根本的に治癒を促す療法ではない)が主体です。しかし、ステロイド剤は、塗った直後は症状が速やかに消退しますが、やめれば悪化するせいか、当院を訪れる患者さんの多くが使用したくないといいます。一つの疾患で、一般的に多く使用される薬剤がこのように問題視されたり、また一人の患者さんが複数の医療機関を巡り歩いたり、さまざまな民間療法に活路を見い出そうするのは、ほかの疾患では類を見ないことです。これは、その治療に疑問をもち、また結果に満足せず、よりよい治療を求めていることの現れと、とらえることができます。
  ステロイドの使用に関しては、原因の特定ができ、排除することが可能な場合や一時的な炎症(例えば虫刺され、金属や植物、食物、衣類によるかぶれなど)には最も有効です。ただし、原因を特定できないもの、また原因検索を十分にしなかったものに対しては、当然ながら長期連用を余儀なくされる場合があり、その際に副作用が問題となります。私の経験から言いますと、アトピー性皮膚炎といえでも皮疹の状態や訴え、問答である程度の原因を特定することができますし、実際的方法でこの原因を除去することの可能性も大きいです。
  さらには非ステロイドの外用剤のさまざまな組み合わせによってステロイドを使用しなくても十分に改善することも可能です。逆の見方をするとステロイドを使用するとその強力な作用のため、十分な生活指導、環境改善などの原因除去を行わなくても症状は消退しうる、いわば問題の解決を先送りさせる結果となるということです。ただ、私が行っているような生活指導と非ステロイド治療は、一人一人原因もちがいますし、また、本人に一番良い外用剤を少しずつ試して行うために、ある程度の時間が必要となります。
 アトピーは高血圧のように完成された病気ではなく、一過性の反応として捕えるべきです。ゆえにその治療で最も重要なことは、いったい何が原因となっているかを検査し、実際的な方法で原因除去することです。これは、卵、牛乳、大豆などの一般的アレルギー物質のみならず、チョコレート、スナック菓子、食物油、食品添加物、農薬、洗剤、漂白剤、住宅建材、また水道水の塩素においては、当院独自に開発した塩素除去型入浴剤の使用に切り替える等の多岐にわたる原因除去指導が必要になります。
  そのうえで当院では70%以上の方が非ステロイド治療で改善しています。


食物による中毒 ↑UP 

 アトピー性皮膚炎の原因としては一般的にはアレルギー、乾燥肌が考えられています。しかし、私は、これでは不十分と考えております。食物のアレルギーの場合、食後30分までに顔面や上半身を主体に淡く発疹が出現しますが、数時間後には消退します。首や四肢に出現するものは長時間持続します。これも食物の影響によるものですが、私はアトピーの原因は蛋白質、脂質過多による起因物質の代謝障害、中毒反応で皮膚の汗腺を介してこれらの物質を排出する際に起きる皮膚障害であり、アレルギーとは全く別の機序によるものと考えています。むしろ、これによるものが食物誘因の主体であると思います。
  体内において、食物由来(油脂や高タンパク、食品添加物など)の中毒物質の分解・排泄が障害され、起因物質の蓄積反応が生じ、これが汗から排泄される際に表皮細胞を障害します。現在は食物に多数の化学物質が食品添加物として混入されたり、作物からは農薬が検出されるのは周知です。これらや栄養素の中で有害になりやすい窒素を持った蛋白質の取り過ぎがアトピーの一つの成因なのです。これらは当然汗として排出されるわけであり、夏はより発汗量が増え、有害物質が汗腺に悪影響を及ぼし、発汗機能も低下させてしまいます。つまり、アトピーは汗をかきたいけれども外に汗が出ずに体内に滞ってしまい、あせもが悪化したような状態になり、熱も体内に滞り体がほてるわけです。
 高タンパク(豚肉の赤肉、牛肉、レバー)、高脂肪、スナック菓子やチョコレート、油で揚げたものは中毒反応が出ますので控えてください。乳幼児の場合、皮膚同様、消化、代謝、分解、排泄機能も未熟なうえ、中毒によってアトピーが誘発されることも十分考えられます。
  食物繊維を多く摂取しましょう。食物油はナタネ油、オリーブ油、ゴマ油(大白の白ゴマ油)を使用してください。(調理、サラダはすべてです。)理由はこれらの油はリノール酸が12〜16%と少ないためです。現在、サラダ油と称している一般の油はサフラワー(紅花)、コーン油が主体です。これらは70%、50〜60%のリノール酸が含有されています。リノール酸からは痒みの原因となる物質が生産されるので中止してください。なお、ナタネ油にはリノレン酸が10%内外含まれています。これは現在健康によいとされる魚の油と同一のものです(他の食物油には全く入っていません)。
  チョコレート、インスタントラーメン、ポテトチップス、油で揚げたスナック菓子は油自体がすでに酸化されている恐れが大きいので中止です。(食べたあと非常に悪化する割合が高いです)同様にファーストフードも中止です。マーガリンはリノール酸系統の食物油が原料ですのでバターの方が好ましいです。牛乳は低脂肪のもの、卵はヨード卵、ひら飼いの卵(多少高めですが)の方が飼料に化学物質が入る危険性が少ないため安全だと思います。いずれにせよごく少量ずつ食べてください。悪化するようなら中止してください。プリン、マヨネーズ等の卵の二次製品は、中止してください。
  野菜は無農薬と称したもの方が安全で好ましいです。ただし、無農薬自体どこまで信用してよいかわかりませんが。みかんやキウィ、リンゴなどの果物の酸や、醤油、塩、味噌の塩分も直接刺激となります。


水道水中の塩素 ↑UP 

 乾燥肌や皮膚に対して直接影響し、アトピーを形成する要因となっているのが「水道水中の塩素」です。水道水中の塩素は皮膚を乾燥させ、汗腺を閉塞させると私は考えています。実際に当院の統計によると、ホコリや布団に入ると痒くなる方は14%、プールで悪化22%、風呂で痒くなるのは34%です。しかも驚くべきことに全国的には、水道水中の塩素濃度がプールの濃度より高い地域が3分の1もあります。
  水道法によると、蛇口からの残留塩素は0.1ppm以上となっていますが、その上限は設定されていないのです。ちなみに、プールの塩素濃度は0.4ppm〜1ppmとの規定が あります。
 私が、患者さん宅の水道水を調べたところ、東京太田区1.5ppm、川崎、横浜0.8〜1.2ppm、茨城県南部では0.2〜0.7ppmとの数値を得ました。つまり、半数近くが、プールの水以上の塩素が混入した水道水を使用しているということです。また、都市部ほど塩素濃度は高くなっており、アトピー性皮膚炎が都市部に多いのと一致します。
 これでは、プールから出た後に洗眼しても逆効果ということになります。こうしたことより、水道水中の残留塩素こそがアトピー性皮膚炎の最大の要因ではないかと疑問をもち、更に検証してみました。
 そのため、土浦市内の小学校でアンケート調査を行いました。

土浦市立右籾小学校におけるアンケート結果(1995)
  男子(242名) 女子(273名) 合計(515名)
現在アトピー 30名 14.00% 34名 12.40% 70名 13.50%
過去アトピー 42名 17.36% 49名 17.95% 91名 17.66%
水について不安 水道水使用 75名 30.99%
(70.09%)
94名 34.43%
(72.87%)
189名 32.82%
(71.61%)
浄水器使用 56名 23.14%
(52.34%)
52名 19.05%
(40.31%)
108名 20.97%
(45.76%)
現在アトピー

ほこりで悪化

2名 0.83%
(5.56%)
5名 1.83%
(14.71%)
7名 1.36%
(10.00%)
風呂水がしみる 7名 2.89%
(5.5%)
15名 5.49%
(44.12%)
22名 4.27%
(31.43%)
プールで悪化 3名 1.2%
(8.33%)
4名 1.4%
(11.76%)
7名 1.36%
(10.00%)

 実際にダニやハウスダストが多いほこりで悪化することを自覚する人は全体の10%であり、風呂の水がしみると答えた方は31%でした。話は前後しますが、では一体風呂の水はどうしてしみるのかを考えてみる必要があります。皮膚炎があるから水やお湯がしみるのか?それとも水に含まれている成分がアトピー性皮膚炎の患者には刺激と感じるのかです。いずれにせよ、このように毎日刺激を受けることで病状は悪化し遷延化(せんえんか)することには間違いありません。  アンケートにおいても、このように推察することが充分できます。

 なお温水は冷水よりも塩素が遊離しやすいので、刺激を感じやすくなります。風呂で痒くなるのは、温度刺激よりも塩素による化学的刺激が主体です。乳幼児が風呂に入って泣いたり、赤みが増す場合は、水道水であれば塩素による刺激が存在します。
  また、ほ乳瓶を塩素系の消毒薬で殺菌するのも皮膚にとっては有害(水道水の500倍以上の塩素濃度)となるので、煮沸や電子レンジによる方法をお勧めします。シャワーはより塩素が遊離しやすいためにお風呂に入るよりもより刺激を受けやすい状況にありますので、特に注意を要します。

外からの刺激 ↑UP 

 乳幼児の場合、皮膚が未熟であるため、湿疹ができやすい状態にあります。果汁による酸、味噌汁、しょうゆの塩による刺激と患者自身のよだれなど外からの刺激により口の周りに湿疹ができます。その場合は、刺激物の摂取を中止し、ガーゼでよだれをよく拭いてください。

紙おむつによるかぶれ ↑UP 

 おむつを当てた部分やテープを当てた部分はかぶれが起きやすい状態になっています。かぶれが起きた場合は製品を変える必要があります。

IgEによる1型アレルギー ↑UP 

 一般的なアトピー原因論として、IgEによる1型アレルギーがあります。ほこりをあびたり、布団に入るとかゆみが悪化するのは、ダニ・ハウスダストに対するアレルギー反応と考えられます。そのため、症状を改善するにはアレルゲン(アレルギーを引き起こす原因物質)を排除する必要があります。
 ダニが最も多いのは布団ですので、ダニを排除するにはまず第一に布団のダニを排除する必要があります。そこで私自身、1987年に済生会中央病院皮膚科勤務医時代、他に先駆けて血液検査でダニアレルギー強陽性の方50名に(株)帝人より防ダニ布団を試作・供与していただき、その効果を検証いたしました。下表にその結果を示します。外用剤は全ての方が、ステロイド剤を防ダニ布団使用以前より使用中も継続して外用していました。私としては、ダニアレルギーのほぼ全員の方に著しい軽快を期待したのですが、効果はその半分の45%でした。これは何を意味するのでしょう。確かにダニアレルギーのある方は、まず第一に防ダニ布団を使用する必要はありますが、実は他の要因が存在しているのです。むろん、私自身この時点では水道水の塩素に気がついていませんでした。
防ダニ布団の1年間の有効性
  中等症(6例) 重症(16例) 全症例(22例)
悪化 0 0 0
不変 1 (16.7%) 3 (18.8%) 4 (18.2%)
やや軽快 0 4 (25.0%) 4 (18.2%)
軽快 2 (33.3%) 2 (12.5%) 4 (18.2%)
著しく軽快 3 (50.0%) 7 (43.8%) 10 (45.5%)

  食物に関しては、特に乳幼児では、母乳や離乳食(卵、牛乳、小麦、米等)が原因の場合が多く見受けられます。
 ところでアレルギーの血液検査ですが、食べて悪化するのに検査結果はマイナス、またその逆に検査でプラスと出るのに食べても全くなんでもないという場合や、母乳しか飲んでいないなのに卵や小麦に反応が出るという不合理が多く見られ、その信頼性はあまり高くないということを、認識していただきたいと思います。
 また、卵の検査用には、最も大量に出回っている白色レガホンの卵を使用しているため、他の種類の卵の反応までは把握できません。このような点までも本当は考慮する必要があるのです。
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